「キラーストリート」全曲感想

サザン7年振りの超大作「キラーストリート」について、個人的見地から感想を述べていこうと思います。

DISC−1
1.からっぽのブルース
 最初からこの重厚感と言うか、何と言うか……。アルバムを買って来て、期待しながら封を切り、CDプレイヤーにセット。そして再生するとこの曲が流れてきました。ギターのリフにやられましたね。歌詞は反戦のような社会風刺で、「ああ、これがサザンのアルバムなんだ」とよく分からない感覚に浸って、感動してました。この時以来、アルバムの中ではお気に入りの曲です。またライブでの映像がとても凝っていてよかったです。

2.セイシェル〜海の聖者〜
 タイトル発表の時一番気になった曲。「セイシェル」という響きにサブタイトルで「海」が付いていたからでしょう。ラジオで初披露された時も聴き入りました。曲調はサザン王道のパターンという感じで、特にBメロが印象に残りやすいと思います。あとCメロのドラムもかっこいいです。この曲も結構気に入ってますが……あんま聴かないな、どうしてだろ。

3.彩〜Aja〜
 2004年シングル3部作第一弾がここで登場。この曲は確か……入学して最初の弁当の時間の最初に流れてました。第一印象は「普通だな〜。サザンっぽいな〜。でもなんかいいなあ〜」だったと思います。サザンにしては珍しい春をイメージした曲ですが、王道且つやさしい感じがしていい曲です。この曲を含め、アルバムには既発曲が10曲ほど収録されていましたが、アルバムで改めて聴いてみると、変わっている部分もあって、よかったです。

4.JUMP
 タイトル発表の時に持った第一印象は「未来を見ていこう、という明るいけどつまんねえポップソング」でした。で、アルバムで実際に聴いてみると……あれ、全然違う。明るくない。でもってファンキーな曲でした。歌詞を見ながらじっくり聴いてみると、ニートに対するメッセージソングでした。まあ確かに「未来を見ていこう」というわけですね。ライブでは結構良かったなあ。

5.夢と魔法の国
 この曲のタイトルを聞いた時の第一印象は「メルヘンチックで、ファンタジーな曲」でした。ところが公式のインタビューに歌詞の感じが違うよう書いてあって……実際に聴いてみたらギターがかっこいいロックでした。歌詞は某大型テーマパークの客のマナーについて。よく考えるとこのアルバムって風刺歌多いですね。ライブではアレンジがやたら凝ってて、WOWOWのスクランブル入りで映像見ても「あ、あそこだ」って分かっちゃいました。次のライブでもまた違うアレンジで演奏して欲しいですな。

6.神の島遥か国
 2005年の夏にリリースされたシングル曲。シングルのスペシャルサイトからの情報から考えたら、「せつない胸に風が吹いてた」みたいな感じかな、と思って、それを期待してました。……そしたら底抜けに明るい、いろいろな面を持つ沖縄ソングでした。「BOHBO No.5」よりこっちの方が気に入るかな……とか思ってましたが、向こうの方が気に入っちゃった。この曲はこの曲で、サビとか好きですが。ライブではサビで両手を振るのが定番になっていくんでしょうか?

7.涙の海で抱かれたい〜SEA OF LOVE〜
 「えっ、ここまで入れちゃうの?」的な曲。シングルは「彩」から入るのかな……と思っていたら、さらに前からでした。2年以上前のシングルまでアルバム先行だったとは……この曲は初めて聴き入ったサザンの曲なので、思い入れは深いです。ソロ活動をしていたサザン復活の曲なので、曲調は王道中の王道。この曲から入れたので、5人になった新生サザン全ての総決算的アルバムになりましたが、結局毛ガニさんいなかったり、サポートメンバーに頼りまくったりであんまそういう感じがしない。残念。

8.山はありし日のまま
 原さんボーカルの曲1曲目。元々「リボンの騎士」しかないと思っていたので、ラジオでそれっぽい発言を聞いた時はちょっとびっくりしました。だけどこの曲は普通過ぎる……次の曲が次の曲なんで、ちょっと印象に残りにくいかな?まあこのほんわかした感じがとてもいいんですが。

9.ロックンロール・スーパーマン〜Rock’n Roll Superman〜
 アルバムの核を担う曲。ラジオでも一番最初に流され、アルバムの中では唯一PVが作られたり、CMで使われたり、ライブでは風船で盛り上げたりと、まさにこのアルバムの中心である曲です。曲調は王道で、アルバム内での人気もピカイチ。かく言う僕もこの曲が一番のお気に入りです。あのバイオリンのメロディーがたまりません!!歌詞も素晴らしいです。いや、大袈裟でなく、本当に、「サザンはまだまだやれる」と思わせてくれる曲です。

10.BOHBO No.5
 2005年の夏、この曲で盛り上がりましたね〜。BOHBO君はプロモーション活動で全国津々浦々へ行ったり、PVで出てきたり、ライブでは映像として暴れまわってくれました。ツアーでは本編最後に演奏されたように、アルバム随一の盛り上げソング。妖艶なレゲエダンサーも盛り上げてくれました。イントロのピアノが僕は大好きです。最初めざましで流れた時から。ただ、様々なところで言われている通り、サビが強引に盛り上げようとしている感は否めません。僕はサビも結構好きですがね。またその他の箇所は比較的メッセージ性の高い歌詞となっています。

11.殺しの接吻(キッス)〜Kiss Me Good−Bye〜
 前曲の喧騒から一転、静かに風の音から始まる曲。ピアノが印象的で、「限りなき永遠の愛」とはまた違った感じのものを醸し出しています。歌詞は久々のサスペンス物です。ただこの曲、ラジオで流れた以外は、ライブで同じ感じを表現するのが難しいためか、露出がありませんでした。「サザンにはこういう曲もある」ということを知ってもらうにはいい曲だと思うんですがね……

12.LONELY WOMAN
 一昨年の冬に先行シングルとして発売された曲。でも「暮れのサナカ」でも今回のツアーでも演奏されませんでした。残念。詞はこの間の特集にも書いた通り、クリスマスソングとなっています。最初の印象は「長い曲」。1番だけで2分以上に及んでいたので。予想通り5分半という、このアルバム内では長いほうの部類に入ります。「FRIENDS」があるので印象薄いですが。「キラーストリート」の、冬の名曲です。

13.キラーストリート
 久々のインスト曲。タイトル通り、キラーストリートをイメージして作られた曲です。ライブでは「夢と魔法の国」の後、前奏が始まり、「何の曲だろう」と思っていたら聴き覚えのあるこの曲。おそらく初であろうインスト曲のライブでの演奏でした。

14.夢に消えたジュリア
 2004年の夏に「君こそスターだ」との両A面シングルとしてリリースされた曲。とてもギラギラとした曲です。昨夏の「胸騒ぎのSouthernな曲紹介」で、「君スタと分けて収録」と書いたら(当然分けるだろうと思って書きました)、見事分けて収録されました。物静かな「キラーストリート」から、ギラギラしたこの曲へとつながっていくのは、聴きどころの1つです。

15.限りなき永遠(とわ)の愛
 DISC−1の大トリを飾るのはこの曲。ラジオでも最初の回に流されました。が、その前の2曲が「ロックンロール・スーパーマン」と「ごめんよ僕が馬鹿だった」だったので、第一印象はあまり良くはありませんでした。しかし、聴いていくうちにサビのメロディーやCメロ、曲全体を通して伝わってくる“神秘的なモノ”にどっぷりと浸かって行き、今ではアルバム内屈指のお気に入り曲となりました。ライブでは宇宙な映像が素晴らしい。曲とマッチして、1つの世界観を築いていました。そう言えばこの曲の終わった後の空白がやたら長いのは余韻を残すためですよね?



DISC−2
1.ごめんよ僕が馬鹿だった
 DISC−2は最初からガツンと行きます、この曲で。いきなりこういう曲から始める曲順は、僕はとてもいいと思います。めざましで曲順聞いた時、「おお、こりゃあいい」と思いましたから。この曲もプロモーション活動では頻繁に使われていました。イントロからとても勢いがあり、4月28日の2005年の活動発表では、メンバーの合宿映像からこの曲が流れてきました。あの時は感動したっけなあ〜、まだ見ぬアルバムを期待して。曲のところどころで聴けるブラスやギターの音の調和や、韻を踏んでいるような感じの歌詞が印象的な曲です。

2.八月の詩(セレナード)
 タイトルを聞いた時から「王道な曲」となんとなく思った曲。なのにラジオでも流れないので、「どんな曲なんだろう」と想像を膨らませるばかりでした。で、いざ聴いてみると……イントロから明るい明るい。特にサビのメロディーが気に入りました。また、歌詞には“茅ヶ崎”が登場します。結構人気も高いようなので、ライブでもぜひ聴いてみたい曲です。

3.DOLL
 時期的には「さくら」の後辺りから作られた曲で、一昨年夏のシングルのカップリング曲でした。桑田さんはこの曲をこのアルバムに収録できたことをとても喜んでいるようです。この曲は売れ線など全く狙っていなく、遊び心みたいなものが強く表れてるんでいいと思います。物悲しげな詞も曲と相まっていいですね。

4.別離(わかれ)
 歌詞の悲しさはアルバム中No.1でしょう。恋人が死んじゃうんですから。でも、そんな詞をあれだけ明るい曲に乗せる、っていうのが凄いところだと思います。この曲も最初にラジオで聴いた時には「ふ〜ん」って感じだったんですが、歌詞をよく聴きながら聴いたりしているうちに、お気に入りとなりました。最後のサビ前の『永遠の愛しい乙女〜〜〜』って伸ばすところが新鮮と言うか、印象的です。また、ライブでは関口さんのベースラインから曲が始まりましたが、あの感じが僕にとってはたまりません。「FILM KILLER STREET」にもそんな感じのが収録されてましたが、とにかく最高です。ライブの話に戻りますが、公演場所ごとに間奏の語りの後半部分を変えたり、映像が曲にマッチしていたりと、僕の中ではライブで際立った曲です。

5.愛と欲望の日々
 記念すべき50枚目のシングル曲で、ドラマ「大奥〜第一章〜」の主題歌となりました。ツアーではシングル曲が演奏されない中、前半部分でこの曲だけが演奏されました。“アルバムの中の1曲”として全く違和感を感じなかったので、凄くよかったです。春と夏に出したシングルが爽やか系、サザンの“王道”的な曲だったので、“裏”的な曲で年を締めくくれたのもよかったと思います。サビの振り付けはもうお馴染みになりましたね。時代劇の主題歌なのに英語使いまくってる歌詞などがポイントです。曲もギターとかがかっこいいです。

6.Mr.ブラック・ジャック〜裸の王様〜
 曲作りから歌入れまで20分くらいでできてしまったらしい曲。夜中にビクタースタジオに残っていた3人で、軽く打ち合わせをしてすぐレコーディングしてしまったそうです。そのため曲中で桑田さんが“はいイントロ!!”と叫んでいたりします。詞は「政治家」→「ニッポンのヒール」→「汚れたキッチン」→「ヤーレンシャッフル」と続く社会風刺で、某総理大臣や拉致問題について取り上げています。

7.君こそスターだ
 2004年の夏に「夢に消えたジュリア」との両A面シングルとしてリリースされた曲。公式ではありませんが、アテネオリンピックの応援歌でした。曲はとてもポップで、サザンの“王道”。今回のアルバム収録で、曲の最初に「1,2,3,4」というかけ声が入っています。この曲、リリースされたときは「ジュリア」の方が気に入ってましたが、徐々にこっちが気に入ってきました。何かの応援の時には、ぜひこの歌を使いたいです。

8.リボンの騎士
 原さんボーカルの曲2曲目。この曲の方がラジオで流されたり、ライブでも演奏されたりと、露出が多くなっています。歌詞がとにかくエロくて、放送コードに引っかかりそうです。NHKは完全にNGですね。アルバムに2曲ある原さんボーカルの曲では、僕はこっちの方が好きです。怪しい雰囲気とかがいいです。

9.愛と死の輪舞(ロンド)
 詞も曲も面白い。詞には“アンデルセン”“イソップ”“クロサワの侍”のような童話や喜劇などの世界に関係する言葉が並んでいます。その詞を乗せる曲はイントロから面白い感じが。サビのメロディーも結構いいので、聴いていて飽きない曲です。

10.恋人は南風
 「涙の海で抱かれたい」のカップリング曲。でも5曲入った豪華なシングルの4曲目だったんで、あんまり目立ってませんでした。それでもアルバムにはちゃっかり収録。この曲もサザンの“王道”的な曲で、イントロや間奏が印象深いと思います。再収録されたので、この位置でもっと目立てるよう頑張ってもらいたい曲です。

11.恋するレスポール
 タイトルにそのままギターの名称が。元々は桑田さんのソロアルバム「ROCK AND ROLL HERO」用として作られた曲でしたが、都合によりボツに。しかし、サザン名義でこのアルバムに収録されました。曲は当然のようにギターロックで、DISC−2随一のロックな曲です。そしてメロディーも素晴らしい。詞もギターかじってる人間にしか分からないような部分があります。ライブではこの曲の時にしっかりとレスポールを使い、画面にもレスポールの映像が躍ってました。

12.雨上がりにもう一度キスをして
 「涙の海で抱かれたい」に収録されました。この頃はJALがCMにサザンの曲を使ったりしていて、この曲もCMで使われていました。それで僕も耳にしていて、シングルを買った時に「涙の海で抱かれたい」と一緒に覚えました。今考えてみると、自分がサザンに足を踏み入れた曲が、今こうしてニューアルバムに収録されているというのは、何か感慨深いものがありますね。アルバムバージョンでは、曲がドラムから始まります。サビのメロディーと歌詞はCMで流れていたので、思い出に残っていて、一番いい部分だと思います。

13.The Track for the Japanese Typical Foods called“Karaage”&“Soba”
   〜キラーストリート(Reprise)

 タイトルが史上最長の曲。初めて見た時は「何だこの曲」と思いました。アルバム最強のお遊び曲で、キラーストリート沿いにある“ホープ軒”というラーメン屋さんや“丸屋”というお蕎麦屋さんが詞に出てきます。特に“丸屋”さんの“から揚げ定食”のタレがよくておいしいことを歌っています。もうとにかくお遊びソング。聴いてて楽しくなってきます。後ろに「キラーストリート(Reprise)」が続いているように、キラーストリートを象徴する曲です。そのためか、ライブ開演前の「BOHBOクイズ」では、BGMとしてこの曲がかかってました。また、この(Reprise)バージョンでは、インストではなく詞が入っています。ちょっと聴き取りにくいですが。今度から揚げ定食食べに行ってみよ……

14.FRIENDS
 前曲が“タイトル”最長なら、今度は“収録時間”最長の曲。舞台『クラウディア』の主題歌でした。音の重なりが凄く厚く、重厚なサウンドとなっています。最初と最後は静かに、悲しげに、そして中盤は派手に、と、長い曲の中で表情がはっきりと分かれています。もともとシングルのカップリングだっただけに、「これだけ長い曲を再収録するのかな……」と最初は不思議に感じましたが、最後の方でどっしりと構えていて、いい感じです。

15.ひき潮〜Ebb Tide〜
 サザンのアルバムの最後を飾る曲と言えば、誰かに宛てたメッセージだったりする綺麗なバラッド。そして、このタイトルが発表された時、どんな曲なのかいろいろ考えてみましたが、結局思いつきませんでした。で、実際に聴いてみると……静かに波の音から始まり、終始落ち着いて曲は進行していく。特に誰かに宛てたメッセージがそこにあったわけじゃないけど、とても綺麗なバラッドで、この大作アルバムにふさわしい終わり方となりました。詞も曲もサビが最高。“誰にも負けない愛情で あなたを守るために”…………これに尽きます。

サザンスペシャル